2つのPVモジュールを用いた温度係数比のパラメータ同定
茨城大学 電力・エネルギーシステム研究室 Masuda Takeru
研究背景
太陽光発電システム
太陽光発電は現在も注目を集めている再生可能エネルギーです。無くなることがなく,二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しない。また,仕組みが単純なのが特徴です。
日本のエネルギー基本計画では,2050年のカーボンニュートラル実現を目指し,2030年には日本の電源構成のうち14%~16%を太陽光発電で賄うことを目標としています。
つまり,太陽光発電はこれから更に導入が拡大され続け,一般住宅にも多く普及すると考えられます。
そんな太陽光発電ですが重大な欠点あります。それは太陽の光によって発電量が変動するため発電量が安定しないことです。
この欠点は様々な問題を生みます。特に発電システムでは需要と供給のバランスを保つ必要があり,太陽光発電システムの扱いは非常に難しいです。
今後,太陽光発電を更に導入していくには安定しない発電量の予測が必要になります。
日射量
太陽光発電の発電量の予測において需要なのは日射量と太陽電池モジュール(以降,PVモジュール)の温度になります。
特に,日射量は重要なデータでこれによって発電量は大きく変動します。また,日射量は太陽光発電以外にとっても重要なデータであり,農業や天気予報などにも用いられます。
その日射量の測定方法において,地上からの日射測定には日射計が用いられています。
しかし,日射計が高価であることや,設置,メンテナンスの手間がかかること,観測範囲が狭いことなどの欠点から日射計が設置されている場所はあまり多くありません。
精度の高い太陽光発電の発電量予測には現在より広い分布で,より多くの日射データが必要になるため日射観測の問題を解決しなければなりません。
小型日射計
研究内容
日射計を用いない日射推定
先行研究では,日射計を用いずにPVモジュールのみで日射量を観測する方法を使用しています。
この方法は日射計を用いないためコストの削減に繋がります。また,日射計の設置の手間もかからず,メンテナンスも必要ありません。
日射推定では,PVモジュールの短絡電流と開放電圧の測定値とPVモジュールごとのパラメータを用いてその時の日射量を推定します。このパラメータの中に温度係数比α/βという値が存在します。
研究目的
上記で記述したようにの推定にはPVモジュールごとの温度係数比α/βが必要になります。
しかし,この値は全ての会社が公表しているわけではありません。そのため,どのPVモジュールでも簡単に日射推定が行えるわけではありません。
そこで,私は温度係数α,βが公表されていない場合でも,全てのPVモジュールで日射推定を可能にすることを目的としています。
研究方法
私の研究では,2台の会社の異なるPVモジュールを用います。PVモジュールAは温度係数α,βがわかるため日射量の推定が可能です。この推定日射量を用いてPVモジュールBの温度係数比α/βを推定し,PVモジュールBでも日射量の推定を行います。そして,この2台による推定日射量を比較,分析します。
この研究によって,温度係数α,βが公表されていないPVモジュールでも日射量推定が可能になると考えられます。また,温度係数比α/βの推定値の比較からPVモジュールの故障などを読み取ることが出来ると考えられます。
実際に使用しているPVモジュール
参考文献
[1] 「2050年カーボンニュートラルを目指す 日本の新たな「エネルギー基本計画」|スペシャルコンテンツ-資源エネルギー庁-経済産業省」 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energykihonkeikaku_2022.html.html 最終アクセス:2022年9月14日
[2] 「地上気象観測|気象庁」 」 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/chijyou/surf.html 最終アクセス:2022年9月14日
[3] 「AIST太陽光発電技術開発-産総研」 https://unit.aist.go.jp/rpd-envene/PV/ja/about_pv/index.html 最終アクセス:2022年9月14日